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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 キョンシルは小首を傾げ、仏像を見上げた。
―何だか泣いているように見えるけど。気のせいかしら。
 彼女の何気ない言葉に、トスは胸をつかれたような表情を見せたが、すぐに笑顔になった。
―この御仏ははるか昔から、伏し拝む者の心を映し出すといわれているんだ。もし、キョンシルが泣いているように見えるというのなら、今、キョンシルは心に何か哀しみを抱えているということになる。
―トスおじさんの眼には、どんな風に映っているの?
 興味を引かれて訊ねると、トスの整った顔に苦笑がひろがった。
―俺は怒っているように見える。
―あら、じゃあ、おじさんは何かいけないことをしでかしたってわけ?

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