
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病
トスは初めて若者の顔をまじまじと見た。
「何故、君が私に頭を下げる必要がある?」
今度は、ウォンジュンが沈黙を守った。その静寂はやはり、トスのわずかな苛立ちを誘った。
「―キョンシルのことか」
それは最早、問いではなく確信であった。トスは何も言わず、相手の出方を待った。といっても、別に眼の前のこの若者とキョンシルを巡って争うつもりなど毛頭なかった。
トスがまず優先させたいのは、他ならぬキョンシル自身の気持ちなのだ。彼女が笑えば、トスも嬉しいし、裏腹に哀しめば、トスも幸せではない。仮にキョンシルがこの若者を選ぶというのなら、男としては悔しいけれど、トスに何の異存があろうはずもなかった。
「何故、君が私に頭を下げる必要がある?」
今度は、ウォンジュンが沈黙を守った。その静寂はやはり、トスのわずかな苛立ちを誘った。
「―キョンシルのことか」
それは最早、問いではなく確信であった。トスは何も言わず、相手の出方を待った。といっても、別に眼の前のこの若者とキョンシルを巡って争うつもりなど毛頭なかった。
トスがまず優先させたいのは、他ならぬキョンシル自身の気持ちなのだ。彼女が笑えば、トスも嬉しいし、裏腹に哀しめば、トスも幸せではない。仮にキョンシルがこの若者を選ぶというのなら、男としては悔しいけれど、トスに何の異存があろうはずもなかった。
