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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 王は私情よりも民の益を優先し、国を守り導かなければならない。何故なら、王はこの国のすべての民の父だからだ。あるときは己れの心に背いて非情にならなればならず、あるときは民のために己れを投げ打たなければならない。そこまでの覚悟がなければ、真の王とはいえないし、なれない。
 ただ錦の王衣を纏って玉座に鎮座しているだけでは、飾り物の王にすぎないのだ。傀儡の王ならば、誰でもなれる。しかし、玉座にふさわしい真の王とになるには、欲も柵(しがらみ)もすべての煩悩を絶ち、一人の人間である前に、国中の民の父でなければならないのだ。それは何と孤高で淋しい立場なことか!
 しかし、孤高である王こそが後世から聖(ソン)君(グン)と呼ばれる名君として讃えられることも事実だ。

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