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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

 キョンシルは眼を瞑り、小さく息を吸い込んだ。駄目、本音を口に出しては絶対に駄目。
 勇気と分別をかき集めて、ひと口に言う。
「大丈夫、私なら一人でちゃんとやってやけるから。おじさんは安心して自分の生きる道を探して」
 トスが呆気にとられたようにキョンシルを見つめ、低く笑った。
「何よ、人が真剣に応えてるのに」
 キョンシルがむくれるのに、トスはまだ笑っている。
「何だかな。まるで下手な芝居役者が科白を棒読みしているようだ。そんな言い方では、あまり真実味は感じられないぞ?」
「おじさんは私をからかって愉しんでるの?」
 キョンシルは拗ねたように言い、そっぽを向いた。

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