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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

「判っています。馬執事、お祖父さまは私にとってはたった一人の身内と呼べる方です。両親がお祖父さまに孝行できなかった分、私はお祖父さまにできるだけのことをさせて頂こうと考えていました。少しだけ私に時間を下さい」
 キョンシルの心が伝わったのか、馬執事は頷いた。
「承知致しました。お嬢さまの一日も早いお越しをお待ちしております」
 来たときと同じように深々と腰を折り、馬執事は帰っていった。
一体、どうすれば良いのだろう。
 ふいに身の側を一月の寒風が通り過ぎ、キョンシルは身を震わせた。吐息が白く細く凍てついた大気に溶けてゆく。

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