
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い
普段、ここまで感情を表に出すことのない男が烈しく動揺している。口を開いたのはトスの方が早かった。
「ならば一刻も早くイルチェさまの許に駆けつけるべきではないのか」
キョンシルは心もち首を傾けた。
「それはもちろん、判っているわ。私もそのつもりでいるの。でも」
言い淀み、言葉を探しあぐねて押し黙った。
「でも?」
トスがキョンシルの顔を覗き込む。
「何だ? 何か気がかりでもあるのか?」
「私がお祖父さまの許に行けば、トスおじさんは一人になってしまうでしょ」
その言葉はトスの想定外であったらしい。彼は破顔した。
「ならば一刻も早くイルチェさまの許に駆けつけるべきではないのか」
キョンシルは心もち首を傾けた。
「それはもちろん、判っているわ。私もそのつもりでいるの。でも」
言い淀み、言葉を探しあぐねて押し黙った。
「でも?」
トスがキョンシルの顔を覗き込む。
「何だ? 何か気がかりでもあるのか?」
「私がお祖父さまの許に行けば、トスおじさんは一人になってしまうでしょ」
その言葉はトスの想定外であったらしい。彼は破顔した。
