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君の笑顔

第28章 肝試し ~片野 和泉~

「当たり前。てか前に進んでいいどころじゃない。前に進め。」


その言葉で

私の中の何かが弾けて

きれいに光っていくのを感じた。


そうだ、いつも

ウラは私を浄化させてくれるような、
そんな存在なんだ。



「ウラの言う通り。私、過去の事にずっと固執してた。」


ウラの言葉によって

私の中の何かが動きだす。


「もう沢村のことは考えないようにする。あれは素敵な思い出として、私の中にとっておくよ。」


忘れたくない大切な思い出だけど


でもそれをずっとこだわるのはもうやめよう。

“今”を見ていれば、
きっとまた、
私に素敵な時間をくれる人が現れる。


一瞬、
スケにキスをされた瞬間を思い出した。


やだやだ、

なに思い出してんだろっ…私…

ブンブンと頭をふったとき、


「がんばっ。」


とウラが優しい声で言った。


「何か上から目線なのがむかつくなぁ……」


素直にありがとうって言えずにいると、ウラはケタケタと笑った。


「あ、もう着いちゃったよ。」
前に灯りと人だかりを見つけ、私がつぶやく。


肝試し…
全然こわくなかったな。


それはきっと、ウラと一緒だったからかもしれない。

いつも、さりげなく私を助けてくれるウラ。


繋いでいるこの手から、感謝の気持ちが伝わればいいな


そんなことを思いながら、私は肝試しを終えた。

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