彼と心と体と。
第3章 14歳
あたしは見て見ぬふりを続けた。
でも拓海はやめなかった。
直接、拓海に聞いた。
「亜子のこと、好きなんでしょ?」
ぽかんとして言った。
「…え?別に好きじゃないけど」
なにそれ。
まあ、彼女にそんなこと言われたら困るか。
「あたし、知ってるよ?メールしてるのも、電話してるのも。亜子のこと好きになったんじゃないの?」
あたしは泣きそうだった。
いっそのこと、肯定してほしかった。
実はそうなんだ。ごめん。って。
拓海の答えは違った。
「好きじゃないって」
否定しなくてもいいのに。
否定してほしい訳じゃない。
辛いから、楽にしてほしかっただけで…
「わかった、じゃあ…帰るね」
振り返らなかった。
拓海の顔も匂いも、鬱陶しいものに感じた。
好きだったのに。