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赤い印

第6章 嫌がらせと嫉妬と束縛

呼吸が乱れる。
浅くなって、速さが上がる。

うまく、息ができない。

膝の力が抜けて、
その場にうずくまってしまった。

脂汗が額から滲み出て
あの日の残像が頭と心を
真っ赤に染めていく。

「杏樹!」
雄治の声がした。

「浅く息をしちゃ駄目だ!
深呼吸して!落ち着いて!
大丈夫!俺がいるから!」

言われたとおり、深呼吸をする。

自分の頭を雄治の胸に預けた。

トクン、トクン…

穏やかな心臓の音に耳を澄ませながら闇に堕ちた。

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