人生憑依。
第4章 番外編 妄想笑顔
わーわーとうるさい男子の声と
必死に裏返りながらも友達を応援する女子の声が交わる今日は
体育祭の日。
「よっしゃー頑張ろうな大野!」
俺の学校の体育祭は
文化祭の次に盛り上がり、
卒業式よりも感動できる行事であって
このような暑苦しい奴は
珍しくない。
「…ん」
むしろ、
俺のようなやる気がない奴のが
周りには珍しいだろう。
「んだよ、そのやる気のなさ!」
「お前が張り切りすぎんだって」
わざとらしくため息をついてやると
頭をわしゃわしゃと遊ばれる。
すると、大きな校庭内に
アナウンスが流れ始める。
『次の種目は、80m競争です!これに出る子はそっちに並んでねー』
明るい呑気な声。
突っ込みどころが沢山だ。
「今の相葉だろー、ったく本当に期待裏切らないよな」
ははって笑う隣の男子。
隣だけではなく、
前も後ろも笑っていたと思う。
この声の主は、相葉は、
空気を和ませるからすごい。
すると、ざわついた空気に
少し低い声が
またアナウンスで流れる。
『―次の種目は100m競争です。100m競争に出る人はスタート地点の近くに整列してください』
プツッと切れたアナウンス。
俺は、この時声が誰だかわかっていたが
なぜか顔は見たことがなかった。
だからこの声の主の顔は
どんな顔なんだろうなんて、
ぼんやり考えていた。