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人生憑依。

第4章 番外編 妄想笑顔




「まあ、並ぶか」

「―…めんどくせ」



呟くと、重たい足を前進させる。

体育祭なんて、出たって
なんのためにもならないと思うと
やる気なんて徐々に薄れて

結果的には消えた。

こんなのさぼったほうが早いけど、
将来、自由になるためだ。と
心に言い聞かせる。


いつの間にか、それが
俺にとって「逃げ」となって
癖になっていた。



「はあ…」



今日何度目かのため息をついて

みんなが並ぶ所に行く。



「大野さーん!」

「大野先輩ー!頑張ってー!」



全力で俺の名前を呼ぶ女子の声。
男子の目が痛い。
だから、嫌なんだ。



「…モテモテだね」



隣の顔の濃い人が言う。
一緒に走る人なのだろう。



「別に、うれしくない」



むしろ、恥ずかしい。なんて
心の中で呟く。

俺は、特別かっこよくなんてないのに
こんなに注目浴びて
他の人に悪い気がしてならない。



「わかるよ、その気持ち」

「―は、…?」



くすっと笑う其奴。

その人は、
にこにこ笑って
俺の肩をぽんと叩く。



「ま、頑張ろうな!」



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