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人生憑依。

第4章 番外編 妄想笑顔




「―よし」



俺の膝に絆創膏を3枚くらい大袈裟に貼った会長は
すっと立ち上がる。



「戻ろうか」



俺は少し気が引けた。
もっと話したいと思った。
もう、この時には
会長に落ちていたのだろう。



「俺いいや、行かない」

「え、?」

「膝の骨にひび入っちゃいました、って言っといて」



ベッドに横になる俺。
会長は目を真ん丸にして
こちらを見ている。

真面目くんには「サボり」というものが
分からないのかもしれない。



「―…あんなんじゃひびなんて入んないよ」



会長はふふって微笑む。
刹那、保健室のドアが開いた。

見ると、そこには
松本がいた。



「大丈夫か?」

「ん、平気」

「そうか、…ってなんでベッドに寝てんだよ」



ぺしっと軽く頭を叩かれる。

松本は眉を吊り上げて怒っている様子だった。
それでも俺は目をそらして
布団に顔を埋める。



「ひび、入っちゃって先生が来るまでベッドで寝たいっていうから俺が寝かせたんだ」

「え、ひび入ったのか…?」



怒っていた顔が
不安そうな顔にがらりと変わる。
松本の表情はコロコロ変わるから
面白い。



「ね、だから俺達はもう行こう」

「…、おう」

「お大事にね、大野くん」



にっこり笑う会長。

儚い笑顔だった。
日差しに透かれ消えてしまいそうな笑顔。



記憶に残るか残らないかぐらいの儚さだった。



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