人生憑依。
第4章 番外編 妄想笑顔
「保健室に行こう」
会長のその言葉で
俺は保健室に連れて行かれた。
「―失礼しまーす、っていない的なー」
軽い口調で言う会長。
俺は笑わないで、
何も考えていなかった。
「そこ、座っててね」
「ん、」
丸椅子を指さされ俺は
そこに腰を降ろす。
ふと膝に視線を落とす。
血だらけで少し砂利も混ざって
赤黒い色だ。
「はい、傷見せてー」
いつの間に消毒液やらを持った会長は
俺の前に跪く。
窓から差し込む日差しに
会長の髪は茶色に透き通って
温かそうな色をしていた。
「痛そうだね。まあ、派手に転んだもんね」
コットンに消毒液を湿らせて
傷の周りから砂利やら血やらを
拭ってく。
ピリピリと地道な痛みが
背中を走る。
「君、体育祭とか嫌いでしょ」
「え?」
「明らか、つまらなそうな顔してた」
「―…んふ、ほんとにつまらなかった」
はははって笑う会長。
この笑顔に
なんだか心が熱くなる。
屈託のない、綺麗な笑顔。
俺にはできない、こんな顔。
「俺櫻井翔。これからも何かあればよろしく」
「大野智、…よろしく」
握手した手はやけに消毒くさかった。