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身代わりH

第13章 *69

あたしは逞しい背中に小さく頷き、お兄ちゃんが上着を羽織るのを見つめていた。




…もう…行ってしまう。



さっきまではあんなに近かった…あたしだけのものだった。



もう少し…もう少しだけ…。




「…あのっ…」




気付いた時には声が出ていた。




「…なんだ?」




だけど…、そうして振り返ったお兄ちゃんの目は驚くほど冷たく澄んでいて。




「……っ、なんでも…。…ごめんなさいっっ」




あたしは辛くなって俯き、ぎゅ、と布団を握りしめた。




お兄ちゃんはその間に呆れたように溜め息をつくと、何も言わずに部屋を出て行った。




-パタン。

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