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私と飼い主のはなし

第8章 過酷な一日

「おい見ろよ!すげー!藤野の生乳!!」

「ぶるんぶるん揺れてるな!!」

「てか乳首もくっきり出てるじゃん!俺当分おかずいらねぇわ笑」



通り過ぎる度に聞こえる男子達の声。
胸が揺れる度に乳首がTシャツに擦れて頭がぽーっとする。
恥ずかしいけど、視線が気持ちいい…っ


長いようで短かった100mを走り抜けた先には沢山の男子が集まっていて私はもう胸を隠すことなく荒くなった息を整えていた。

こんな私の身体を見て喜んでくれるなら、もっと見て欲しい…


男子たちの視線を感じながらふらふらとおぼつかない脚で水を飲むために蛇口まで向う。
軽く蛇口を捻るが水が出てこない

(あれ…壊れてるのかな)

蛇口をどんどんひねっていくが水は一切出てこない。


「あ!!日向!そこ使ったら危ないよ!!」

「え?」

友達の忠告と共に耳にはいるのは蛇口付近から聞こえる嫌な音
危険を感じて一歩後ろに下がった瞬間勢いよく蛇口から噴水のように飛び出す水


「ひゃっ!?」

シャワーのように一気に頭から水を被ってしまう。
蛇口を閉めようにも近づけない。
その時視界に入ったのは澤田くんだった。
走ってこっちまで来てくれて蛇口を閉めてくれたのだ。


「さ、澤田くん…あ、」

ありがとうと言おうとした時男子たちの一層大きな歓声が聞こえて来た。


「やべーよ!!透け透けじゃん!色まで見えてんじゃん!」

「藤野さんまじでドジっ子!最高すぎるって!」

「くそー!携帯持ってくりゃよかった!」


その歓声でやっと気付いた。
びしょびしょに濡れた自分を見下ろすと水で張り付いたTシャツにくっきりと乳首の色や形まで浮き出ていた。

一気に顔が熱くなり腕で胸を隠す。

「やだっ…私…」

恥ずかしくて澤田くんの顔も見れない。
俯いているとふわりと肩にかかる澤田くんの匂い。


「これ、さっき教室から取ってきたんだ。そのままじゃ風邪ひくから着替えて来たらいいよ」


前にも貸してもらったジャージだった。
ぎゅっとジャージを握り締めて頷く。

「おいおめーらうるせーよ!とっとと授業に戻れ!」

未だに騒いでいる男子に一喝居れてくれた澤田くんにありがとう、と言えないまま私はグラウンドに背を向けた。




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