あたしは被害者
第9章 どっちもぶっ壊す
思い浮かべた顔を
握りつぶすようにして
ぎゅっと拳を作った。
力を緩めて……
本当に顔が入っていたら
この拳の隙間から
赤いのがトロって出てくるんだろうな
不気味ににやける自分の顔を見て
あたしって
悪女……
なんて思った。
でもね?
それでも可愛いの。
全身の力を抜いて
ベッドに倒れる。
足元にある鞄からは
いつから鳴っていたのか、
マナーモードのバイブ音が
床に響く。
だれ?
達也?
桶川?
エリ?
しほり?
まさかのママ?笑
だるい体を起こして
画面を滑らせる。
え
……まじか。
表示されているのは
『中村 正也』
あたし、もう
勝ったの……?