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君のため。

第12章 ◇素直◇

根拠のない自信のあるダメな人間に
私は昔から弱い。

ダメな人間とわかりつつも、ハマってしまう。
あなたみたいな人には私しかいないって。
でも幸せになれないのはわかっているから、
わざと遠ざけて、真っ当な人を選んでいた。


なのに運命的にあなたは現れる。

その言葉は絶対に言っちゃダメなのに。

「素直になれよ」

それは昔大好きだった人が私によく言っていた言葉。
結局素直になれず、どうなる事もなかった。
でもずっとずっと、大嫌いになるその日まで、
何年間も好きだった人。

あの人と同じ言葉。

「素直になれよ」

なんなの?その自信はいったいどこから来るの?

そして昔大好きだった人と同じように
私の頭をポンポンと軽く触れる。


…ダメだよ。私はもう、あなたを拒むことはできない。自分が抑えられない。

昔大好きだった人の代わりでもいいの?

「いいよ。かえって嬉しいくらいだよ」

…私の完敗。


だから仕方なく始まる。
許されないことだとしても、仕方なく。

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