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君のため。

第54章 1月11日。別れの日。

この日1月11日に会う約束をした12月最初は、まさかこの日が別れの日になるとは思っていなくて。
「明けましておめでとう」
とか言って、いつものように何回も抱きしめあうんだろうな、とか呑気に考えてたことを覚えている。

いつもの駅。まだ彼の姿は見えない。
駅のポスターを眺めていると、
彼はやってくる。
私に声をかける。
いつもと違う表情。
手もつないでもらえない。
何かこの後叱られるような空気さえ。
「今日は何時までいれるの?
…なんで最後の最後にそんなに長い時間…」

…また最後って言った。


カラオケ開店まで時間あるからと喫茶店。

席に座り、やっぱり叱られそうな感じがして、私は彼の顔を見れずに左斜め上の方の天井を見つめる。

実は何を言っていたかよく覚えていない。

でも声が、声のトーンが今までとは全く違っていて、
以前聞いたことのある仕事の電話をしている時のような話し方。事務的に。
何か言っている。わたしは叱られている?

涙が、左斜め上を見上げているのでこぼれはしないけど涙が溢れてくる。
そこに彼の会社から電話。
その内容の方が耳に残っている。
今日、人が足りないので応援に行かないといけない、
…行っちゃうんだ。途中で。今日はきっと。

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