テキストサイズ

君のため。

第55章 1月11日。カラオケ。

カラオケに。

3カ月前、二人で初めて来たカラオケ、部屋もその時と一緒。

前に来た時は横に並んで寄り添いあって座っていたけど、
この日は少し距離をあけて座る。距離を。

彼は歌う。次から次へと。

私はお酒のメニューを広げてずっと見ている。
頼む気もないのにずっと。
そして泣いている。

「なんで泣くの。泣き虫サナ」

そういって彼は私の涙を指でぬぐってくれる。
あなたのそういう所に私は弱い。
でも最後なのにそんなこと、
そんな優しいことしないでよ。


「知ってる?」

次に歌う曲について彼は私に尋ねた。

私は頷く。

スキマスイッチ「奏」

初めてこのカラオケに来た時も歌ってくれたね。

またメニューで顔を隠しながら。
ちゃんと歌詞を聴いてみると、
それは私達の光景みたいで、
…また、泣いてしまう。


涙が止まらない私。
「サナはどうしたいの?」

…わからない…と答える。

本当にわからなかった。ただ悲し過ぎて。


…ダメだ。歌おう。
私も歌うことにする。

何故か失恋の歌ばっかり選んでしまう。

「なんでそんな歌、歌うの…」

私が最後に歌ったのは

プリンセスプリンセス「M」

私はちゃんと直視することができなかったんだけど、
…あなたは泣いてた?


そして。

そして。

どうしてあなたはそんなことしようとするの?

最後の最後に。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ