
巡 愛
第2章 言霊の……
私はいわゆる仕事人間で趣味らしい趣味が無く、働き始めてから毎日、朝から晩まで仕事のことしか考えないような男だった。
だから、27でした初めの結婚は2年と持たずに破綻し、その後、上司からもちかけられた9歳下の妻との今の結婚も、“形だけ”と言われてもしょうがないような有様で……
朝早く出て夜遅くに帰り、家での食事はひと月のうちで片手で数えても余るほどで、長期出張も頻繁だった。
一人息子の子育ても妻にまかせっきり、妻と一緒の時間などごくたまに夜を共にするくらいで、それだって妻にしたら、義務のようにさえ感じていたのかもしれない。
