
巡 愛
第2章 言霊の……
彼女のつぶやきを覗いては、自分も「未明」としてメッセージを残してきたのだが、それが3ヶ月もすると私は次第に彼女のご主人が羨ましく、妬ましく、腹立たしくさえ思えてきた。
こんなにも彼女に思われているのに、それに対して何ひとつ返すことなくのうのうと仕事をするだけなのかと。
自分のていたらくな夫ぶりは棚にあげた、まったくもって失礼きわまりない感情である。
私はカンナさんの悲しみを帯びた呟きをどうにかすくってあげたくなり、いつしか「未明」としてではなく“彼女の夫”の目線でメッセージを書き込むようになった。
離れていても君の声は聞こえている、と。
なかなか会えなくても君の想いは伝わってる、と。
寂しい想いをさせて済まない、と。
