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 巡 愛 

第3章 もう一度……


 カンナさんとやり取りをするようになって10ヶ月、私が彼女に対する恋を自認してひと月ほどが経った頃、私は本社に呼ばれたため妻のいる自宅へ3日間帰った。

 妻は相変わらず、“お帰りなさい”と出迎えてはくれたが、それ以上何も言わない……言ってくれない。

 私にはそれがなんだかとても虚しく感じた。

 妻にはその目に、私という存在がどのように映っているのだろう、と。 

 夫であり、妻であることは、ただ生計がひとくくりであるという共同生活者でしかないのか、と。

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