巡 愛
第4章 珈琲の
私の妻になって17年も経つのに、1年前まで妻のこんな何気ない美しさに気付きもしなかったんだと思うと、それまでの歳月が口惜しくも感じてくる。
会社に無理を言ってまでも、単身赴任という名の別居を終えてよかったと心から思う。
「今日の晩ご飯、何がいいかしら?」
牛乳を多めに入れたコーヒーの入った、左手のマグカップに口を付けながら、妻は私の向かい側に腰をかけた。
「うーん……“なんでもいい”って言ったら怒るだろ?」
食卓で向かい合って朝食を取りながらこんな話しができるようになって1年が経った。
「怒りはしないけど……」と言いながら笑う妻は私の大事な宝物だ。