赤い恋 ~sho sakurai~
第42章 家
*翔ちゃんさいど*
佐「…、」
佐織さんはケータイを耳から離して通話終了ボタンをタップする。
佐「…ここに、来てくれるそうです」
俺たちの顔を交互に見て佐織さんは少し安心して微笑を浮かべた。
和「ありがとうございます」
にのが佐織さんにそう言って微笑んだ。
翔「……あの…、俺ら結衣がここに来るまで席、外してていいですか?」
和「……翔ちゃん?」
もしかしたら結衣は俺たちの姿を見つけてすぐ逃げてしまうかもしれない。
翔「…もう…、離れたり…、そういうの嫌なんです…」
佐織さんは分かったらしくコクリと頷いてくれた。
和「…よし…、じゃあ俺たちはしばらくここから離れてようか」
にのが俺の顔を見て立ち上がる。
俺も頷いて傍らに置いてあったカバンを掴んだ。
佐「結衣が来たら連絡します」
佐織さんがケータイを見せて真剣な表情で言った。
翔「はい。じゃあまた…」
結衣は俺たちを「守る」と言った。
俺にだって分からない。
何が最適で、何が正解かなんて分からない。
正解なんてないのかもしれない。
でも、これは違う。
結衣が俺らから離れて行くのなんて絶対に違う。
そんなの嫌だ。
結衣はなんでも自分のせいにしすぎなんだ。
だから…、俺にだって少しくらい
悩ませてよ…。
俺たちは店を出てすぐ近くにある
カフェに入った。
和「……翔ちゃん…、大丈夫だよ…、なんて、無責任かぁ……」
にのが苦笑しながら頭を掻く。
翔「ん、……いや、ありがとね」
にのは俺を心配してくれてんだろーな。
そういう優しさが側にあるのって
なんかいいな。
と、俺のケータイが鳴った。
和「え?もう?!」
にのが驚きの声を上げる。
翔「……いや、大野さんだ」
それは大野さんからのメールで、
『どう?佐織さんに会えた?』
という内容だった。
こうは聞いてきてるけど、多分大野さんも考えてるのは結衣のこと…。
俺は直ぐ様返信する。
『うん。会えたよ。今から結衣が来るんだ。ちゃんと連れ戻すから』
絶対、引きずってでも連れ戻してやる。
もう、こういうのは嫌だ。
またしばらくしてメールが届く。
翔「……は(笑)」
大野さんの返信は、
『連れ戻すんじゃなくて、帰ってくるだけ』