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ふしだらと言わないで

第5章 慰み者の娘 2

「お前を見初めてな
ぜひ愛妾にしたいと言う話がある
さるご子息だ、喜びなさい
もう何も不自由しなくていい
お前はここから出れるのだよ」



 耳から言葉がすり抜ける

 私が?ここを?
 …出る?
 誰かに貰われる?



 おじ様は素晴らしい話のように聞かせるがどうでもよかった



 いきなり涙が溢れる

 そんな話
 いらなかった

 断れる話だろうか?
 否、使用人如きの一存で
 それが叶うはずもない



 ここを離れる
 私の第二の家を

 誰かに貰われていく
 離れ離れになる

 おじ様と



 ポロポロと涙がこぼれる



 消さなきゃと思った
 消して消して、それがいいって

 だって31も年齢差がある
 私は使用人で、相手は主人で
 何もかも成立しない

 恋してると言った所で
 きっと誰も信じない

 冗談にしか聞こえない
 あり得ない、馬鹿げてる



「なぜ泣く、双葉」
「嬉し涙、でしょうか…」



 この段に至って、ようやく自分の気持ちに気づくなんて

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