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ふしだらと言わないで

第6章 慰み者の娘 3

 ―パシンッ



 乾いた音がする
 一瞬何が起こったのかわからなくて頬を叩かれたのだと理解する

 来るべき時がきて
 私の決意がぐらりと揺らぐ
 けれどすぐに立て直す

 これが私のしたことなんだろう
 叩かれた痛みよりも海斗の傷ついた顔に胸を痛める



「疑われていたのですね…」



 確かめるように呟く

 因果応報…
 私の悪事は明るみになった

 おしまいということだ
 茶番も、私個人の人生も

 沈みかけた私という船をおじ様が助けるとは私は思わなかった



「信じたくはなかった…」



 悲痛そうに顔を歪めて
 彼の拳はわなわなと震えている

 当然のことだろう

 会社の信用、低迷
 情報漏洩によりこうむった右下がりの業績の失墜の原因は、紛れもなく私が起こした責任であった

 私の背後にいる者
 繋がり、役割
 信用をアダで返す女
 全てがバレてしまった

 私が得た情報を
 おじ様がどのように使ったか
 私は知らない

 知らなくても結果はここにある
 九条院海斗は追い詰められている

 社長としても、愛する人間に裏切られた男としても

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