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ふしだらと言わないで

第6章 慰み者の娘 3

「なぜだ…
理由を、教えてくれ…」



 唇を噛む
 理由などない

 傷つけられる痛みより
 誰かを傷つける痛みのほうが
 何倍も胸が痛かった

 涙が出そうになる
 責められるのはいいが
 優しくて強かった彼がそんな顔をするとは思わなくて後悔が勝った

 想われていた
 私が思うよりずっと

 それをズタズタにした
 もうずっと最初から



 本当に…
 おじ様はひどい人だ

 私に…こんな役割を…

 死にたい…



「…」
「失望した」



 何ひとつ弁解のしようがない



「キミが不幸にしたのは
僕だけじゃない
我が社で働く人間全てだ
どう責任取る?」
「…私にその覚悟が
なかったとお思いですか?」



 引き結んだ唇
 言葉ではなく行動に移した私に海斗は僅かにたじろぐ

 ゆっくり近づいた私は顔を伏せ
 海斗の目の前で彼の服を掴む



「私がただ言いなりに
己の職務を全うしたとお思いですか
あなたから見た私は
そんなくだらない女でしたか」



 私はお腹を押さえる



「私は自分で選びました
己の意思で…
あなたよりあの人を優先しました
私にとって…海より深く
大事な人だから」



 シャツをつかむ
 その手に力がこもる



「だから責任を取れとおっしゃるなら
私は喜んで受けましょう
それだけのことはしましたから
覚悟はできています」



「キミは…そこまで…」

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