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FREE BIRD

第29章 ライオンになり損ねた

彼女を駅まで送り僕達は後ろ髪を惹かれる思いで別れた。


少し日が長くなった夕方は薄明るい。


僕はフラフラと宛てもなく街を歩いた。


まだ家に足が向かない。


僕は財布の中身を確かめた。


所持金5千円…まあ、いっか。


呑み直そう。


寂れた赤提灯の店の扉から割烹着を着た女性が暖簾を出した。


「もう呑めますか?」


「ええ、どうぞ」


笑顔が母を思い出させる女将に、僕は引き寄せられるよう店に入った。



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