テキストサイズ

異能者の望むもの

第1章 prologue

Side ???


『な……んで? ねぇ、なん…で? なんでなの?』

これは? ……嗚呼、これは…昔の……俺。まだ幼く、無知で素直だった頃の馬鹿な俺。

あの事件を受け止められず、いや、受け止めたくなく、ただ「なんで?」としか聞くことが出来なかった頃の弱い……自分。

だが、なんでだ? 今更なんでこんな昔の記憶が出てくる。今までの俺の人生は“夢”だったのか? ゆめ、ゆめ? ――そうか、この昔の映像(ビジョン)は、“ゆめ ”だったんだな。

そう、この映像(ビジョン)こそが夢であり、目覚めたら何時もの俺がいる。そういうことか。

しかし何故だ? なんで今更……? こんな昔のこと……。

まだふっ切れてないのか? 俺は? あの……“事件”を……。

『嫌だよ! 嫌だ、こんなの! こんなのイヤ……だよ』

そう言って幼い俺は逃げるようにその場を去っていった。

駄目だ! そっちに行くな! そっちに行っちゃ駄目だ! このまま進んで行けば帰れなくなる。今ならまだ間に合う。間に合うんだ。帰れるんだ……。

「だ! ―――」
駄目だと声を発しようとしたが、なにか見えないものに遮られるように俺の声は響かなかった。いや、発することさえ出来なかった。

まるで、 おまえにはこの道(レール)しかないと言わんばかりに。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ