
クリスマスに奇跡を
第2章 奇跡のあとのクリスマス
悟と無言の別れをしてから俺は、悟から離れるために隣街の会社近くに引っ越し、一人暮らしを始めた。
だが気がつけば、病院近くの公園のベンチにいて悟の病室であろう窓を眺めている。
未練がましい事この上ないなと、馬鹿みたいに笑いが込み上げてくる。
+++++++++
俺は寒空の中、今日もまたベンチに一人腰掛けていた。
コートの襟を立てて天を仰いだ。
鬱蒼と広がった分厚い雲がゆっくりと流れるのに誘われるように、頬に銀色の滴が伝った。
今でもあの時の記憶が鮮明に蘇る。
器械に触れた指の感触と暖かなぬくもりが忘れられず、思い出すと未だに手が震える。
俺は、小刻みに震える両手を見つめた。
10年も待つことができたのに、なぜあの時は待つことができなかったのだろうか。
なぜ、悟の生きようとする姿をきちんと見ようとしなかったのだろうか。
なんて馬鹿なことをしようとしたのだろうかと、後悔しか残っていない。
「隣、よろしいですか?」
他にもベンチは空いている。
なのに何故、わざわざ隣に来るのだろうか。
正直、放っていて欲しい。
だが、男は迷わずに俺の横に腰を据えた。
「今年も冷えますね。」
黒い靴に、赤いズボン。
おかしな格好だと顔を上げれば赤い帽子に、口元を覆う白いひげ。
どこからどう見てもサンタクロース。
ふざけているとしか言いようがない。
だが気がつけば、病院近くの公園のベンチにいて悟の病室であろう窓を眺めている。
未練がましい事この上ないなと、馬鹿みたいに笑いが込み上げてくる。
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俺は寒空の中、今日もまたベンチに一人腰掛けていた。
コートの襟を立てて天を仰いだ。
鬱蒼と広がった分厚い雲がゆっくりと流れるのに誘われるように、頬に銀色の滴が伝った。
今でもあの時の記憶が鮮明に蘇る。
器械に触れた指の感触と暖かなぬくもりが忘れられず、思い出すと未だに手が震える。
俺は、小刻みに震える両手を見つめた。
10年も待つことができたのに、なぜあの時は待つことができなかったのだろうか。
なぜ、悟の生きようとする姿をきちんと見ようとしなかったのだろうか。
なんて馬鹿なことをしようとしたのだろうかと、後悔しか残っていない。
「隣、よろしいですか?」
他にもベンチは空いている。
なのに何故、わざわざ隣に来るのだろうか。
正直、放っていて欲しい。
だが、男は迷わずに俺の横に腰を据えた。
「今年も冷えますね。」
黒い靴に、赤いズボン。
おかしな格好だと顔を上げれば赤い帽子に、口元を覆う白いひげ。
どこからどう見てもサンタクロース。
ふざけているとしか言いようがない。
