
赤い花~情欲の檻の中で~
第3章 MemoriesⅡ
ちなみに祥吾は四年制大を卒業し、美華子より一年遅れて入社してきた。二十八歳の美華子より一つ若いのだ。
「よくそんなに冷静でいられるな」
祥吾は何かに急かされるように、ロックのウイスキーをひと息に煽った。
「私は別に、あなたのような野心家ではないもの」
「俺のどこか野心家だっていうんだ!」
「そんな喧嘩腰にならないで。これもあくまでも噂だから」
―営業部の木梨祥吾はどうやら、アメリカ支社への出向を上に願い出ているらしい。
その噂が美華子に届いたのは、今年の春先であった。
「よくそんなに冷静でいられるな」
祥吾は何かに急かされるように、ロックのウイスキーをひと息に煽った。
「私は別に、あなたのような野心家ではないもの」
「俺のどこか野心家だっていうんだ!」
「そんな喧嘩腰にならないで。これもあくまでも噂だから」
―営業部の木梨祥吾はどうやら、アメリカ支社への出向を上に願い出ているらしい。
その噂が美華子に届いたのは、今年の春先であった。
