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赤い花~情欲の檻の中で~

第3章 MemoriesⅡ

 そこまでしておきながら、唇を重ねるというだけの行為が彼には薄汚いもの、無意識とはいえ、唇を拭いたくなるほど汚らわしいものだというのか!?
 もっとも、彼にとって閨の中での行為はすべて女を意のままに翻弄する手練手管(テクニツク)にすぎないのだろうから、そこに何らかの気持ち―感情を求めても無駄なことだ。
 そう、こんなときでさえ、自分はこの卑劣漢に愛情を求めている。こんな男には愛情どころか、気持ちの片鱗さえ求めてはいけないと判っているのに。

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