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赤い花~情欲の檻の中で~

第3章 MemoriesⅡ

 だが、と、美華子はともすれば、周囲そのままに闇の色に染まりそうな己れの心を叱咤した。
―祥吾さんは、自分から私に口づけたじゃないの。
 恐らくは、あの別れ際の軽いキスも女の心を一時的に紛らわせるためのものであったに違いない。幾ら楽観的に考えようとしても、そう思わざるを得ないほど、おざなりな心のこもっていないキスであった。

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