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それでも、私は生きてきた

第49章 懐かしい場所

数年前、私が実家を出た理由を、
叔父と従従兄弟達は知っている。
けど、
祖母は真実を知らない。
ユリは就職先が見つかって関東に行った。と、
話してある。と聞いている。

祖母の前では、
母達の物語を壊してはならない。



祖母の家に着くと、
祖母と叔父が朝食を済ませたところだった。


いらっしゃーい、ユリちゃん、お久しぶりねー


小柄でいつも優しい微笑みを見せてくれる祖母。
変わらない姿。


癌の再発予防として、
放射線治療を続けている叔父も、
変わらない微笑みを見せてくれた。



懐かしい光景。
懐かしい風景。
懐かしい微笑み。


時間が巻き戻ったような
幸せの空間に
込み上げる涙を必死に抑えた。

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