えっちなたいいくのじかん
第1章 プロローグ
そのタヌマ、常々野望を抱いていた。曰く、「俺の支配するこの男子トイレ、既に構造などは熟知している。湿度や気温、壁の材質や音響効果さえもだ。しかし、トイレといったら、この学校にもう一種類あるではないか。女子トイレ。俺の支配の及ばないトイレが学校にあるなんて!なんてくやしいんだろ!くそ、女子トイレ、征服してやるっきゃないな!」
天晴れタヌマ、心意気は確かに見上げたものぞ。しかし、敵は多かった。その野望を教室で高らかに宣言した後、教室はタヌマの敵で溢れえって混乱した。
敵の1つは、度胸のない穏健派の男子、へなちょこ野郎どもだ。そいつらは、女子トイレは永劫不可侵であるべき領域であり、一歩足を踏み入れただけでも「スケベ」「ヘンタイ」「エッチ」などといった不名誉な称号が避ける間もなく降りかかってくる恐ろしい力を持っているから、半ばタヌマを心配して、半ば自分自身にその被害が波及することを恐れて、タヌマに女子トイレ征服を断念するよう熱心に抗議していた。