
私
第13章 午後7時
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン……
凍りついた私達の間の空気を遮るかのように7時の鐘が無情に鳴り出した。
「百合子様……
貴女何を言ってんの……?」
「主人が貴女は邪魔だとおっしゃっているのよ。」
まるで別人のような言い方、眼差しで私を見た。
楽しそうな笑顔で……
「お芝居は止めて下さいよ……
相手は宮本さんですよ……」
「いえ、
主人だわ。」
「受話器を貸して……貸して下さい……」
私は恐ろしさを感じ震えながら、無我夢中で百合子から受話器を奪おうとしたが、笑いながら一段一段、からかうかのように階段を上がってゆく。
