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第1章 words

楽屋には時計の針の音が鳴る。

腕時計の液晶には『23:56』の数字。

もう少しで日付が変わる。

PVの撮影。後大倉と俺が撮り終わればすべての撮影が終わる。

他のメンバーは先に帰ってしまって、スタッフを除けば二人っきり。

…だからと言って何かあるわけではないけど。

仮眠しようかと椅子に座り机に伏せてると、扉が空いて大倉が入ってきた。

「早かったな。」

「カメラの調子良くなくて直すからちょっと待っといてって。」

小さくため息をつきながら隣の椅子に座り、つまらなさそうに背もたれにもたれた。

帰る時間がまた遅くなる。

「暇やな~…。」

二人だけじゃなにを話していいかわからない。俺にとって大倉は寝てるか食べてるかしかないようで、話すことも他の人に比べればかなり少ない。

「うん…。あ、聞きたいことあんねんけど。」

音楽プレイヤーをいじっていた指が突然止まった。

「どうしたん?」

「この曲の歌詞の意味がいまいちわからんねん。作詞すばるくんやろ?」

見せてきた音楽プレイヤーの画面には「words」の文字が。

正直戸惑った。まさかこんなことを聞かれるなんて予想すらしてなかった。

まず、大倉がこの歌詞の意味が分からないほど純粋で子供な脳の持ち主だとの思ってなかった。

「…わからんの?」

「うん。」

「no-no-noとか歌詞かいてんのにわからんの?」

「…うん。あ、別れの話なん?あれ。」

ふつうそうは聞こえへん!!メロディからもそうは読みとれへんはずや!!

「…世の中には知らんでいいこともたくさんある。そのうちわかるやろうから俺が教えやんでもいい。」

「…なにそれ。」

あからさまにがっかりされてもどうしようにもない。

テンションが急激に下がった大倉は床に寝転がって深いため息をついた。

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