背徳の雨
第5章 儚く、脆く
そんな変な気分に陥り始めた時
「お姉さん」
一人のホストが現れた。
白狐。
彼はそう名乗った。
お世辞にも
カッコいいとは言えない見た目の彼。
筋肉質で長身。
明るい茶髪で目は異常に小さい。
話によれば
先天性眼瞼下垂を患っているそうだ。
殆ど白眼を剥いた左目が
痛々しく見えたが
全く偏見などはしなかった。
彼は目のせいで
今までキャッチに成功した事が
一度もなく、
付き合った人数も一人二人。
話した感じも
面白い、優しい、誠実。
それは演技ではないと感じた。
まだ夜の世界に
染まりきっていない彼が
何故か私には輝いてみえた。
先天性眼瞼下垂で
偏見され中傷されても
頑張って働く姿に魅了され、
私は彼のお店へ行く事にした。
店に入った瞬間
私と白狐に視線が集まる。
その視線は否定的な感じだった。
音楽も静かな店内。
プレイヤーと客たちの会話も
そこそこに聞こえる。
白狐はプレイヤー達に
偏見の目を向けられても
微動だにせず、椅子に私を座らせた。
そしてカウンターへ立ち去り、
入れ替わるように
黒いハットを被った男性が現れ
私の前で膝まずいた。
「口座、誰にします?」
竜也と名乗るホストに
黒いファイルを差し出され、開く。
が、私は誰のパネル写真も見ず、
一言告げた。
「白狐で。」
その瞬間、
店中のプレイヤー達が静まり返り、
皆の視線は私一点に集中した。
私は胸を張って告げると
竜也は驚いた表情をして下がる。
そしてすぐに白狐と入れ替わった。
「馨ちゃん!」
ありがとう!
小さな目。
笑うと潰れて無くなる。
その目が何故か可愛く見えた。
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