切ない関係
第13章 本当は。
風に揺れているサラサラな髪。黒眼が大きな目。ぽってりした唇。
見た瞬間、心を奪われた。
「うわっ!寝ちゃった……今何時だ?」
相葉の声で我に返った。
「もうすぐ入学式だから、早く行けよ。」
俺に気付いてないようだから声をかけると、ビクッと肩を震わせて俺を見た。
「あ…すいません、ありがとうごさいます。」
少し焦ったように、横にあったカバンを持ち、俺の横を通り過ぎようとした。
その瞬間、俺は頭より先に体が動いた。
「…何か…?」
とっさに相葉の腕を掴んでいた。
目の前には、吸い込まれそうな瞳。
腕を掴んだはいいけど、言葉が出てこないから代わりに頭をポンッと手を置き、「遅刻するなよ、」と言い残して戻った。
きっと、相葉の頭には?が一杯だろう。なんだかそれが目に浮かぶようで少しおかしかった。
それが、相葉との一番最初の出会いだった。