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理想と偽装の向こう側

第23章 幸か不幸か

話しかけたいのに、声が出ない!



何か口の中に突っ込まれてて、邪魔なんだけど!



何とか必死で、アピールしなきゃ



「ピピ…ピ…ピピ…ピ…。」



機械音が、少し変わった。



「え…香織?」



あっ!小田切さん気付いた!



「香織…。香織!解るか!俺の事解るか!」



ボヤけてだけど、小田切さんが泣きそうな顔をしていた。



泣かないで…。



「手…動いた…。ナースコールを!」



「分かったわ!」



う~ん…腕が上がりにくいな…。



「香織!」 



私の手を小田切さんが、握って頬に寄せた。 



よし…もう片方の手も…。



小田切…さん…。



全魂込めて腕を上げて、小田切さんに伸ばす。



「香織!!」



ポスッ…。



布団の上に腕が落ち…私はそこで力尽きた。

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