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理想と偽装の向こう側

第7章 利用と束縛

「…えっ…ズルいって…?」



ドキッとする…何だろう…。



「香織んの傷心を利用して、縛り付けてるから…。」



耳元で小田切さんは、そう囁いた。



「でも…。」
「でも?」



それが今は、心地良い。



小田切さんとの空間を失ったら、水槽の中で酸素を吸えない、金魚の気分だろう。



傷を癒す『理想』から始まった『偽装』…最後に辿り着くのは、どっちなんだろう。




「でも…私も今は…小田切さんに縛られてたいです…。」




普段なら、こんな台詞正面きって絶対に言えない。



恥ずかしいな…流石に…。



ガラスに表情が映らないよう、俯く。



そんな私を小田切さんは、後ろから抱き締めてくれた。




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