テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第8章 絶対服従

キールと前菜が運ばれて来た。 



「えっ…これ…。」



「適当に頼んだ。腹減ったし。」
「…っ!」



腹減ったしって…私の都合はお構い無し!?



この唯我独尊ぶりは、本当に変わらないな…。



「じゃ…香織。乾杯。」
「乾杯…。」



キンっ!と、グラスの甲高い音が響いた。



料理も次々運ばれてきて、嘉之は感想を述べながら食べ進めていたが、私は正直喉が通らない。



「あれ?香織、進んでね~な~。」



「あっうん…何か緊張しちゃって…。」



「なんだよ、それ。」



そう言って屈託なくニカッと笑った。



この顔も大好きだったな…。



「俺さぁ~今年中に海外に進出させてもらえるんだよね。」



急なフリだったが、苦労した時代を知ってる分、素直に感激してしまった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ