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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

「えっ…。」



梶さんは、目を伏せながら辛そうな表情を一瞬見せた。



「それでようやく踏ん切りがついた。妻を傷つけてまで、得る夢なんてあるんだろうかって…一番見たいのは、妻の笑顔だったから。それから仕事探して、妻のご両親に頭下げて、結婚を認めて貰えた時は本当に嬉しかったよ…。」



完璧に見えた梶さんの過去…その分痛みも苦労もしてきたからこそ、言葉にも重みがあったんだ。



「そうだっんですか…。でも、私に何故過去を話して下さったんですか?」



「君に、妻と同じ思いをして欲しくなかったんだ。」



「梶さん…。」



「企画書を読んだ時にね…君の彼への愛情を凄く感じてしまって…。余計なお節介オジサンだと思ってくれればいいよ。」



はははっと、梶さんの笑顔が余りにも温かくて、感涙が込み上がった。



だから、仕事だけの関係の私なんかに…こんなに気をかけてくれたんだ。 


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