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理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

少しの間を置き、急に梶さんが質問をしてきた。



「渡辺さん…好きな画家とかいるかい?」



「あ…そうですね…ダリとか好きです。」



何だろうか?



「ははっ!渡辺さんらしいね。シャガールとかじゃないあたりが。」



「シャガールも嫌いじゃないです!色使いとか、あの世界観とか!」



「でも、ダリなんだろ…ガラになりたいの?」



「いえ…流石にそこまでは、憧れますが…。」



梶さんは、小さく笑い、



「渡辺さんは、渡辺さんだよ。後、彼の全部を背負い込み過ぎないようにね…。彼、脆そうだし。周りに助けを求めるように。僕もずっと味方でいるからさ。」



梶さんは、そう言って手を差し出した。



私は、温かくて逞しいその手を握り握手してもらう。



「必ず成功させよう!」
「はい!必ず!」



梶さんと別れ、私は力強く前を向いて歩き出した。




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