テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第10章 信頼と疑惑

なんとか動ける様になってから、キャンディを拾い集め、簡単なおかずだけ作って、手紙を書く。



『今日は、帰ります。今日、好きな画家の話題になって懐かしくて買ってきました。覚えて…』



ポタポタと…手紙の上に水滴が落ちた。



「やだ…手紙が濡れ…ふっ…うぅ…。」



私は両手で顔を覆ったが、手や指の隙間から、涙が伝い落ちていく。



涙は止めどなく溢れ出て、どうにも止まらなかった。



「ふぅ…ひっく…ひっ…。」



私は、その場に泣き崩れた。



今まで張り詰めてたものが、ポッキリと折れた気がする。



見えなかった亀裂が、一気にヒビを拡げ、ピシピシと音を立てて、剥がれ落ちる…。



修復出来ない溝は、確実に刻み込まれた。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ