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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

「…素材ですよね。今、サンプルを…。」



私が素材のカタログを出そうとすると



「香織…久しぶり。」



嘉之は、私に近付いてきた。



「あっ…!」



条件反射でつい一歩引き下がってしまったが、嘉之は笑いながら椅子を引いてくれた。



「…座りなよ…体調どう?」



「だ…い丈夫…。」



心臓が凄いバクバクしてて、聴こえちゃうんじゃないかと思う。



椅子に座ると、嘉之は床に膝を着いて机に腕を置く、目線が丁度同じになってドキッとした。 



思わず見つめ合ってしまう…。



嘉之が口を開いた。



「香織…ごめんな…。」



「え…。」



「疑った訳じゃないんだ…ただ…居ても立ってもいられなくてさ…。」




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