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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

◎ ◎ ◎ ◎

ガチャリとドアが開く。



嘉之は開口一番、



「香織、焼き肉食いに行こう。」
と、誘って来た。 



余り食欲ないけど、私の意思なんて通る訳ない。



「うん…こないだ行った所?」 



「そう、その内高い所に行こうな。」



笑いながら嘉之は言ったけど、その内があるのかな…。




焼き肉屋は、駅から少し離れた所にあるが、マンションからは遠くはなかった。
お店に入り、オーダーを見てると



「香織、レバー大丈夫だよね?」



「うん…好きだよ。」



「クセのあるの結構、大丈夫だよな。貧血起こさないよう、食べとこうぜ。」
「うん…。」



一応、気にはしてくれてるのかな…。



クセがあるか…だから、嘉之みたいなタイプ引いちゃうのかな…はぁ~。



「飲み物は、とりあえずビール?」



「あ…うん…。」



「俺、あんまり上手いと思わないんだよな…苦いし。」



「脂っこいものには、スッキリすると思うけど。生なら苦味も余りないよ。」



「ジョッキ一杯は、要らないんだよね。」



何の気なしの会話が続いて、ちょっと穏やかムードになっていく。




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