テキストサイズ

理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

五分くらい経っただろうか、髪はハネることなくサラサラに乾いた。



「ありがとう…本当に上手いんだね。手先が器用だからかな?」
「そうかもな。」



謙遜しないな…自画自賛ですよ!



でも、初めてのことでくすぐったい…今日の嘉之いつもと違うよね…なにかあったのかな…。



「嘉之…。」



私が振り返ろうとした時、後ろから嘉之は抱き締めてきたので、ちょっと驚いた。



「わっ!」
「香織…いい匂いする…。」



そう言うと髪の上から頬擦りをしてから、顔を肩に置いてきた。



「嘉之…今日…どうしたの…?」



「ん~普通じゃ~ん。」



いや!明らかに普通じゃないでしょ! 



何か意図が…今朝の言葉も意味深だし!



この状況を素直に喜べない私がいて悶々としてると、嘉之の右手が私の顎を掴んできて、自分の方に向けさせた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ