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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

やっぱり…私じゃなくてもいいんだ…。



嘉之を裏切らない傀儡がいれば、それでいい…。



傀儡に『好き』なんて言葉をかけるわけない。



それでも側にいたいなら、奴隷の様に徹すればいい…。



ただ、嘉之を一途に愛して、壊れたレコードみたいに「好きよ。愛してる。」を繰り返せばいい…。



そうすれば嘉之は、抱き締めてくれる…キスしてくれる…壊れるくらい抱いてくれる…。



「…はっ…はは…。」



そんな人生で…良いわけないのに…どこかで、嘉之への執着が心に絡み付き、私に決断をさせない。



そう…この執着は、頑張った自分を否定したくないだけ…。



ここで折れたら、今までやってきたことが無駄だと思いたくないだけ…。



ただの『自尊心』なんだ。



元木さんみたいに切り替えられたら楽なんだろうな…。



いっそ…嫌いになれたら楽なのにな…。



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