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理想と偽装の向こう側

第11章 亀裂

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シチューが煮込み段階なので、おたまで底が焦げ付かないよう気を付けて、黙々とかき回してると、風呂上がりの嘉之が後ろから覗きこんできた。



「腹、減った…。」



「もう少しだよ。煮込んだ方が美味しいから。」



「うん…いい匂い…。」



そう言って私の腰に腕を回して顔をくっ付けてきた。



…何か今日は、妙に甘えん坊モードだな…、あのメールなんかあるのかな…。



最近すっかり裏を読んでしまうクセが付いてしまった。



「嘉之っ他の用意するから、チューハイでも飲んで待ってて!」



「ん~。わかった。」



離れてもらわないと準備出来ないしね…そんなことを考えてしまう、ドライな自分がいる…。



嘉之は冷蔵庫から新製品のチューハイを取り出し、何味にするか考えていた。



「はい、これお摘みにして先に食べてて。」
「サンキュー。」



本当にいつもと違うな…いつものパターンにならないかも!
早く寝れる!?



密かな期待をしてしまった。



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